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コキンチョウの頭の色の表現型と遺伝

1.コキンチョウの頭の色
 コキンチョウの頭の色は、遺伝的には全部でRed(赤)、Black(黒)、Yellow(橙)の3色となります。この色に関して、ノーマルコキンチョウの場合は問題なく3色の表現型(外見)になっていますので、誰もが疑う余地のない所でしょう。ただ、色変わりのコキンチョウの場合は、外見上、3色以外の頭の色に見える場合が出てきます。それは、体の色の変化に影響を受けて、実際の頭の色が違って見える場合があるだけで、たとえ、色変わりであっても頭の色は上記の3色に他なりません。
 コキンチョウの品種名は、遺伝を基に名前が付けられています。例えば、下記の写真で赤頭ブルーコキンチョウの頭の色は桃色っぽく見えますが、桃頭ブルーコキンチョウとは言いません。表現型(外見)の色で名前をつけるのではなく、あくまでも遺伝としての色で名前をつけているという訳です。これにより、遺伝の法則を正しく理解し活用できるという訳です。そういうわけで、実際には赤頭に見えなくても赤頭という呼び方をする意味がお分かりいただけましたでしょうか?
ノーマル系の場合の例
赤頭ノーマルコキンチョウ
Red-head(RH) 赤頭
黒頭ノーマルコキンチョウ
Black-head(BH) 黒頭
黄頭ノーマルコキンチョウ
Yellow-head(YH) 黄頭

イエロー系の場合の例
赤頭イエローコキンチョウ
Red-head(RH) 赤頭
黒頭白胸イエローコキンチョウ
Black-head(BH) 黒頭
黄頭白胸イエローコキンチョウ
Yellow-head(YH) 黄頭

ブルー系の場合の例
赤頭白胸ブルーコキンチョウ
Red-head(RH) 赤頭
黒頭ブルーコキンチョウ
Black-head(BH) 黒頭
シルバー系の場合の例
赤頭白胸シルバーコキンチョウ
Red-head(RH) 赤頭
黒頭白胸シルバーコキンチョウ
Black-head(BH) 黒頭
※ブルーの場合は、外見上で赤頭と黄頭の区別をすることができません。また、シルバーの赤頭において、黒い部分が多く、赤い部分が少ない場合は、黒頭(白色)に見える場合があります。
   

2.それぞれの頭の色になる遺伝子の持ち方
 以下の説明の中では、赤の遺伝子はR、黒の遺伝子は黒色b、黄(橙)の遺伝子はyで表現することにいたします。
1)赤頭(あかがしら)として発現する場合の遺伝子の持ち方
赤頭は、伴性遺伝の優性(sex-linked dominant)となります。
●オスの場合はどちらかに赤の遺伝子を持っていれば赤頭になることができますので、赤頭は出やすいということになります。
つまり、赤の遺伝子を両方とも持っている場合  ZRZR  となり問題なく赤頭になります。次に、赤を1個と黒を1個持っている場合も  ZRZb(ZbZR  となり赤頭となります。
 なぜならば、赤と黒では赤の方が強いため表現型としては赤頭として発現することになるからです。この場合、赤頭ですが、黒頭のスプリットを持っているということになります。従って、外見は同じような赤頭に見えても、ペアにして雛をとる場合には、スプリットの有無で誕生する雛の頭の色が違ってくる場合があります。
●メスの場合は  ZRW-  (Wに遺伝情報は乗らない)というように一つの赤の遺伝子で発現することができます。逆に、オスのように黒のスプリットを持つことができません。
但し、黄頭の遺伝子は、常染色体上の遺伝のためオスメス共にスプリットを持つことが出来ます。

2)黒頭(くろがしら)として発現する場合の遺伝子の持ち方
黒頭は、伴性遺伝の劣性(sex-linked recessive)となります。
●オスの場合は両方とも黒の遺伝子を持たないと黒頭にはなりません。
つまり、  ZbZb  というように両方に黒の遺伝子が存在しないと発現しないということになります。また、黒色は劣性なので赤のスプリットを持つことはできません。
●メスの場合は  ZbW-  (Wに遺伝情報は乗らない)というように一つの黒の遺伝子で発現することができます。当然、赤のスプリットを持つことはできません。
但し、黄頭の遺伝子は、常染色体上の遺伝のためオスメス共にスプリットを持つことが出来ます。

3)黄頭(きがしら)として発現する場合の遺伝子の持ち方
 黄頭の場合は、常染色体劣性遺伝(autosomal recessive)になりますので、オスメスとも、常染色体上に黄色の遺伝子を2個持てば黄頭になるように推測できますが、実は、黄頭として発現するためには性染色体上に赤頭の遺伝子を必ず持っていなくてはなりません。
つまり、常染色体上で  yy  であり、なおかつ、性染色体上で赤頭の遺伝子を持っている必要があるということになります。当然、1個の黄色の遺伝子  y- では発現しません。
※では、常染色体上に黄色の遺伝子を2個持っていて、性染色体上に黒色の遺伝子を2個(オスの場合)持っていた場合はどうなるのでしょうか? はい、この場合は黒頭で発現しますが、嘴の先が黄色に発色するようになります。
下記の向かって左側の写真のコキンチョウが 常染色体  yy  と性染色体  ZbZb  をもっている状態です。写真のように黒頭ではありますが嘴が黄色に発色しています。右側は、通常の黒頭となります。この場合でも、黄頭のスプリットは持てます。
黄嘴黒頭ノーマルコキンチョウ Yellowtip Bill Black-headed Normal Gouldian Finch cock.
黄嘴黒頭ノーマルコキンチョウ
黒頭ノーマルコキンチョウ Black-headed Normal Gouldian Finch cock.
黒頭ノーマルコキンチョウ

3.頭の色の遺伝の例
 上記の法則に基づき実際の繁殖における頭の色の遺伝例を上げておきましょう。スプリット持ちの場合は、スラッシュにて表記しています。
例えば、黒頭のスプリットを持った赤頭は赤頭/黒頭と書いています。

1)赤頭♂(ZRZR)×赤頭♀(ZRW -)のペアの場合

親オス

親メス

ZR

ZR

ZR

ZRZR

ZRZR

赤頭♂

赤頭♂

W

ZRW

ZRW

赤頭♀

赤頭♀


 スプリットなしの赤頭の場合は、♂♀共に問題なく左記の表のとおり赤頭の子供が産まれます

2)赤頭/黒頭♂(ZRZb)×赤頭♀(ZRW -)の場合

親オス

親メス

ZR

Zb

ZR

ZRZR

ZbZR

赤頭♂

赤頭/黒頭♂

W

ZRW

ZbW

赤頭♀

黒頭♀


 オスが黒頭のスプリットを持っている赤頭の場合は、外見上は上記1)のオスと同じに見えますが、左記の表の通り、オスは「赤頭」と「黒頭のスプリットを持った赤頭」の子供が産まれ、メスは「赤頭」と「黒頭」の子供が産まれます。


3)赤頭/黒頭♂(ZRZb)×黒頭♀(ZbW -)のペアの場合

親オス

親メス

ZR

Zb

Zb

ZRZb

ZbZb

赤頭/黒頭♂

黒頭♂

W

ZRW

ZbW

赤頭♀

黒頭♀


 上記の2)のオスに黒頭のメスを交配すると、オスは「黒頭のスプリットを持った赤頭」と「黒頭」の子供が産まれ、メスは「赤頭」と「黒頭」の子供が産まれます。この場合は、オスメス共に表現型が赤頭と黒頭の両方の雛が取れるようになります。 


 その上、例えば、双方が黄頭のスプリットを持っていれば、オス、メス共に黄頭も発現する可能性があります。黄頭の場合は、常染色体上での遺伝であるためオスメス関係なく共に2個の遺伝子を持てるようになっています。従って、伴性遺伝である赤頭や黒頭とは別に考えます。

親オス

親メス

y

-

y

yy

-y

+ ZR = 黄頭

黄頭のスプリット持

-

y-

--

黄頭のスプリット持

スプリット無


 ここで、重要なのは黄頭として発現するには、赤頭の遺伝子を必ず持っていなくてはならないということです。
以下、いろいろな組み合わせがありますので、興味のある方は考えて見ましょう。このように、スプリットまで正確にわかると、子供の頭の色を遺伝の法則により予測することができます。


主な参考文献
「A Guide to... Gouldian Finches AND THEIR MUTATIONS (REVISED EDITION) 」ABK Publications、「Gouldian Finches」Barron's Educational Series,Inc. 、web等

★鳥たちが驚かないようにフラシュレスで自然の姿を撮影しております。お見苦しい点が多くございますがご了承ください。

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